母校である鹿児島市立城西中学校では、
1年生の総合的な学習の時間で
職業に関する学習に取り組んでいるとのこと。
昨年に引き続き、お声がけいただいたので
張り切って行ってまいりました。
私以外にも、専門学校の先生や動物園の方や放送局のアナウンサーさんもいらっしゃいました。
薬剤師として
薬屋さんとして
自分の「仕事」について改めて考える機会をいただきました。
薬剤師の仕事、私の仕事
自己紹介をするときは、「母と子の健康サポート薬剤師です」と言うようにしています。
残念ながら時間が足りなくて、その理由まで話すことはできなかったけど(本当はここに私の「やりがい」の大部分があります)、
①薬剤師になるにはどうしたらいいのか
②薬剤師はどんな仕事なのか
③薬剤師にもいろんな薬剤師がいる
④私の場合はどんなふうに働いているか
⑤私が考える「働く」とは
という流れでお話をしました。

薬剤師になるには…

まず、薬学部のある大学に行く。そして、薬学に関する専門的な勉強をします。
先生の講義を受けるだけでなく、
たとえば、植物から薬効成分を抽出する実験や、化学薬品を混ぜ合わせて合成する実験、動物実験もあります。
犬の解剖もあり、班で1体を約1週間かけて身体がどうなっているかを見る。昨日まで生きていた命を、私たちの学びのために使わせてもらうという体験は、言葉にならない思いでした。
最終学年になると、与えられたテーマについて研究をし、卒業論文を書きます。
そうして薬剤師国家試験の対策に取り掛かります。
薬学部の卒業見込み、もしくは卒業することで、受験資格を得られます。
国家試験に合格し、登録を終えると薬剤師として働くことができます。

鹿児島県には薬学部のある大学がないので、私は熊本大学の薬学部に進学しました。
あの頃は考えもしなかったけど、
行きたい大学があったら、可能なら、見に行ってみるといいと思います。
もちろん、大学についてはインターネットで調べたらいろんなことが分かりますね。
けれども、都会にあるのか、自然豊かな場所にあるのか、
キャンパスの雰囲気はどうなのか、
その場所の空気に触れてみる、感じてみると
自分がそこで4~6年学生生活を送るイメージが湧いてくるのではないかと思います。
それが、きっとがんばるモチベーションになるでしょう。
薬剤師の任務とは…

「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」
堅苦しい言葉が並んでいますが、一言で言うと「人々が健康な生活をおくるために働く仕事」ということです。
調剤とは、その人その人の病気や症状にあわせて、オーダーメイドの薬を調合するということ。
例外はあるけど、薬剤師にしか与えられていない職能です。
また、一人の人が複数の診療科を受診することも珍しくありません。
重複投与や相互作用(飲み合わせ)をチェックして、必要に応じて、処方医に問い合わせをします。
患者さんやご家族に、お薬の説明をし、飲み間違いや飲み忘れのないように、きちんとお渡しする「服薬指導」して投薬する。
このようなことも法律で細かく決められているのは、お薬を正しく提供し正しく使ってもらうによって、人々が健康な生活を送れるようにするためです。そのために、調剤や薬の販売に関わるすべての過程において、薬剤師は重い責任を課せられています。
薬剤師もいろいろ

そういう薬剤師ですが、実際に病院や調剤をする薬局で働く薬剤師は全体の7~8割。
(調剤薬局で働く薬剤師は約60%、病院で働く薬剤師は約17%といわれている)
それ以外にも、私のように町の薬屋さんで働く薬剤師や
製薬会社で研究・開発に携わる薬剤師や
県庁や保健所など行政で働く薬剤師もいます。
私の場合は…

昭和45年(1970年)に私の両親が永吉薬品を開業し、幼いころから薬に囲まれた環境で育ちました。
薬が身近にあったことや、病院を受診したときに白衣を着た女性がお薬を渡してくれながら「お大事にね」と優しく声をかけてくれた、その姿に憧れたことが、薬剤師を目指すきっかけでした。
永吉薬品はこんな職場

町の小さな薬屋さん
入口を入った左側に漢方薬などの市販薬が並んでいます。
お薬は、調剤で使うものや薬屋さんで買えるものを合わせると約2万5千種類くらいあり、
そのうち薬屋さんで買えるものは約1万6千種類と言われています。永吉薬品にあるのは、私が厳選した100種類くらいです。
市販薬の他には、天然のものから作られた身体によい健康食品やスキンケア商品、無農薬で育てた玄米やお酢もあります。
お悩みの症状に合わせて、必要なお薬や身体に優しい食品などをご提案しています。
そして、たまにはこんなこともやっています…
講師の先生をお招きして おから味噌つくりやぬか漬けの講座を開催

薬屋さんがどうして味噌つくりやぬか漬けを?
今「腸活」という言葉もよく見聞きしますね。
腸内環境を良くすることは、とても大事なことです。
免疫力と腸の関係、脳と腸の関係も近年になって研究がどんどん進んできました。
日本の伝統的な食の中にある発酵食を身近なものにしていってもらいたいという思いで、こんなイベントをしています。
日常的には、お薬の販売だけでなく、健康相談をお受けしています…

- 産前産後の身体づくり(貧血の改善)
- アレルギー体質の改善(免疫のバランスを整える、皮ふ粘膜を丈夫に)
- 頭痛のお悩み改善(老廃物の排出、血液の流れをよくする)
- ガンの治療時のサポート
これらは一見違うお悩みに思えますが、共通しているのは「身体づくり」です。
身体(細胞)が健康に元気になることで、お悩みの症状がだんだんと癒えてきます。
それは私たち自身が持つ「自分で自分を治す力」があるから。
身体(細胞)が元気になるには、身体(細胞)に必要な栄養をきちんと摂ることが重要です。
健康相談では、栄養の摂り方のアドバイスや必要なお薬なども合わせてご提案をさせていただきます。
- 元気な赤ちゃんが生まれました
- 花粉症の薬が要らなくなりました
- 頭痛薬が要らなくなりました
- がんの治療を乗り越えて、元気になりました
というお声をいただいたり、お客様の見せてくださる笑顔にやりがいを感じています。
せっかく成長期真っ只中の中学生に直接お話ができる機会をいただいたので、
元気な血液(赤血球)をつくるための栄養の話もさせていただきました。

骨髄の造血幹細胞から分化して、成熟していくその途中には、
葉酸、ビタミンB群、鉄、だけでなく
そもそも骨をつくるミネラルであるカルシウムの吸収に深く関わるマグネシウムが必要だし、
赤血球の膜をしなやかで丈夫にするための亜鉛の吸収には銅が必要です。
正常な赤血球がたくさんあることで、細胞に酸素を届けることができる。
もし十分な酸素がないと、酸欠状態。高山病と同じですね。
頭痛がしたり、気持ち悪くて、集中力も途切れてしまう…
ポテンシャルを十分に発揮できない!ということですね。
不足しがちな野菜をしっかり食べて、元気に過ごしてもらいたいなと思います。

最後に、私が考える働くとは…

「働くとは、傍らの人を楽にすること」と教えてもらったことがあります。
大和言葉って素敵ですね。
自分以外の誰かを楽にすることであり、自分以外の誰かを幸せにすることである。
私は、先の健康相談のように、
身体が楽になりました、元気になりました、よかったです、ありがとう、と喜んでいただけることにやりがいを感じています。
それと同時に、健康になることが目的ではなくて、
元気になって、やりたい事をやれる、夢に向かって進むというのがいいなぁと思っていて、そのお手伝いができたらいいなと思いながら、働いています。
一番言いたいことは…
まず、自分自身が元気でいること。自分以外の人を楽にしてあげるには、まず自分が元気でないとできません。自分の器を元気でいっぱいにして、溢れた分で周りの人を助けてあげてくださいね。
ということでした。
お話を聞いてくれた中学生の皆さんの参考になれば幸いです。